わたしとこれから 夢を叶えた女性たち vol.5

引っ越しの最中に届いた勤務先倒産の知らせ

奇跡の50代といっても過言ではない体型の持ち主の坂本直子さんは、ティザニスタと呼ばれるハーブの専門家だ。宿泊施設や飲食店などでハーブティのブレンドを行ったり、ハーブコーディアルやハーブソルトなどの商品開発に携わっている。
今でこそ、フリーランスのティザニスタとして活躍中の坂本さんだが、これまで二度の勤務先の倒産や給料未払いなど、トラブルが続いた苦労人でもある。

特に二回目の産婦人科医院の倒産時は、折しも自宅の引っ越しの最中に伝えられたという。「それまで住んでいたマンションより家賃が割高になる引っ越しだったから、倒産と聞いた時、正直どうしようかと思いました。」景気も不安定な中、再就職しようにも、47歳という年齢が足かせとなることも分かっていた。“これからどうやって生きていこう…”、悩める日々の始まりだった。そんな時、坂本さんを救ったのがハーブだったのである。

体質やお好みに合わせて、オリジナルにブレンドしてくれるハーブティの一部。

体質やお好みに合わせて、オリジナルにブレンドしてくれるハーブティの一部。

ハーブの香りを嗅ぎながら抽出まで5分間ゆっくり待つ。この時間が至福の時。

ハーブの香りを嗅ぎながら抽出まで5分間ゆっくり待つ。この時間が至福の時。

毎朝飲むという特製ジュース。中身はニンジンとリンゴに、ウイキョウ、イラクサ、アセロラのハーブ濃縮エキスを数滴入れたもの。

毎朝飲むという特製ジュース。中身はニンジンとリンゴに、ウイキョウ、イラクサ、アセロラのハーブ濃縮エキスを数滴入れたもの。

出合った瞬間にときめいたハーブに惹かれ専門家に師事

そもそも坂本さんとハーブとの出合いは、今から遡ること30年前。たまたま休暇で訪れたパリで、ハーブの薬局に入ったのがきっかけだった。雰囲気の良い店内にはたくさんの木の引き出しがあり、白衣を着た上品なマダムがハーブを調合している。「単純におしゃれだなぁと思って、目が釘付けになりました。今でもあの時のときめきは忘れません。」
ハーブに興味を持った坂本さんは帰国後、人脈をたどって、植物療法の専門家に師事することにした。「当時、働きながら勉強していたのですが、時間を作っては東京まで学びに行っていました。その時はただただ楽しくてしょうがなかったのですが、この時学んだ知識がまさか30年後、自分の生業になるとは思ってもみませんでした。」その後、エステティシャンの仕事についた時も、産婦人科医院でのマッサージセラピストになった時も、すべてこの時に勉強したハーブの知識がいかされたのだ。

産婦人科医院の倒産後、坂本さんは実父の看病もあってしばらく充電時間にあてていたが、そのうち、「時間があるなら手伝って!」と、友人や知人からハーブ講座を頼まれたり、ハーブにまつわるイベントなどに講師として声をかけられるようになった。「ハーブの知識はあっても、それまで教えたことがなかったので少々不安でした。教わることと教えることは違いますからね。ところがやってみたら、私自身も楽しくて。意外と向いていたみたいです。」

ティザニスタとして49歳で独立

坂本さんが主催するハーブ講座やイベントで、「ハーブティはこれまでまずいと思っていたけれど、今日のはおいしかった」「イメージが変わった」「色がキレイ、香りも素敵」という参加者の声を直に聞いて、徐々に手応えを感じていった。

なかでも、心に残ったエピソードがある。「ある講座でハーブを使った足湯や、マッサージの仕方を教えたんです。すると、ある生徒さんが自分で試してみたら気持ちよかったからと、陸上の選手でもある娘さんに毎晩マッサージをしてあげたらしいんですよ。すると、“いい記録につながりました。先生のおかげです”と大変喜んでくださいました。何が一番嬉しかったかというと、ハーブがその方のライフスタイルの一部になって、ハーブそのものの恩恵を感じてくださったこと。これこそ、私が以前からやりたかったことだったのだと確信しました。」

迷いが吹っ切れると、坂本さんは自分でティザニスタという肩書きをつけた。このティザニスタとは、伊語でハーブティを指すTisana(ティザーナ)と、~な人という意味の-ista(~スタ)を組み合わせた造語で、ハーブにまつわるオリジナリティを追求したいという坂本さんの信念も含まれている。こうして40代最後の年に、独立を果たしたのだ。

「私にとってハーブは、公私にわたって頼れる人生のパートナーのようなものなんです。ハーブって、抗酸化力があり、一見、優しいとか爽やかというイメージがありますが、実はとっても根性があるんです。雑草のようにはびこるかと思えば、食べられないために色を出したり、強い香りを発したり。私も良い意味で、ハーブのように生きていけたらなと思っています。そして、これからもティザニスタとして、このハーブの魅力を多くの人に伝えていきたいです。」

坂本さんはハーブ入りの手浴や足浴を日常生活に取り入れることを奨めている。自身もすっきりしたいときなどにローズマリーを入れて足浴中。

坂本さんはハーブ入りの手浴や足浴を日常生活に取り入れることを奨めている。自身もすっきりしたいときなどにローズマリーを入れて足浴中。

読者へのメッセージ

ヒストリー

1963.10(0歳)
福岡県田川市で誕生
1981.4(17歳)
高校卒業後、福岡市内のホテルに勤務
休暇中、渡仏した時にハーブに出合い、帰国後、植物療法の専門家に師事
1992.8(28歳)
会員制エステティックサロンに入社
1994.5(30歳)
エステティックサロン倒産のため退社
※この間、実父の看病をつとめる
2001.8(37歳)
産婦人科医院にマッサージセラピストとして入社
2011.5(47歳)
産婦人科医院倒産のため退社
2012.10(49歳)
フリーランスのティザニスタとして独立
現在に至る

※ 年齢は取材時のものです。

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