わたしとこれから 夢を叶えた女性たち vol.4

転身のきっかけは5年に及ぶ不妊治療

1月中旬の取材時。ちょうどギャラリーに飾られていたのは、新進気鋭のガラスアーティストの素敵な作品たち。その名も「トウメイ夜空」だ。
透明なのに当たる光によって、いかようにもキラキラと輝き存在感を放っている空間は、まるで星が煌めく夜空のよう。素敵なあしらいのガラスヘッドがついたペンダントを手に取り、優しい笑みを浮かべるのはgallery QUONAのオーナー黒岩直子さんだ。

黒岩さんは老年病専門病院で20年以上もの間、言語聴覚士として活躍したのち、44歳で昔からの夢でもあったギャラリーのオーナーに転身した経歴の持ち主。そのきっかけは、5年に及ぶ不妊治療だった。

「結婚が遅かったのもあるんですが、直後、主人が体調を壊してしまい、やっと症状が落ち着いた2年後。それから不妊治療を始めましたが、子宝は授からなかったのです。」

寝る前にシュッとお気に入りの香水をひと吹き。上質な睡眠を得るために行っている黒岩さん流の儀式。

寝る前にシュッとお気に入りの香水をひと吹き。上質な睡眠を得るために行っている黒岩さん流の儀式。

ギャラリーのベランダの手入れをする黒岩さん。植物は昔から大好きで、以前、開催した思い入れのある「種」の企画展も大好評に終わった。

ギャラリーのベランダの手入れをする黒岩さん。植物は昔から大好きで、以前、開催した思い入れのある「種」の企画展も大好評に終わった。

以前、企画展で展示した、黒岩さんお気に入りのオーストラリアの植物・バンクシア。不思議なフォルムに心ひかれたのだとか。

以前、企画展で展示した、黒岩さんお気に入りのオーストラリアの植物・バンクシア。不思議なフォルムに心ひかれたのだとか。

かつての夢に向かって、動き始めた44歳

「私なりにやるだけのことをやりきった感がありました。その後、自分らしく生きたくなって一旦リセットしたんです。」キャリアを積み上げた仕事も辞めてしまおう。そう決めてから退職するまで、次なるステージを模索する日々。今の自分にはいったい何ができるのだろう。日常の業務をこなしながらも悶々と自分と向き合い、問い続けた。

そんなある日のこと、友人とお茶を楽しんでいる時にふと「ギャラリーやりたいんだけど、どう思う?」と聞いてみた。すると、「前にも言っていたじゃない。ギャラリーやりたいって!」との思わぬ回答に、黒岩さんはかつて描いていた夢を思い出したという。

「そういえば、少し前に通ったフィニッシングスクールで“ドリームマップ”を作ったことがあったんです。そこにもギャラリーのオーナーになりたいと書いていたんです。毎日の忙しさに追われて、遠い昔の夢さえもすっかり忘れていたんですね。」

それからの黒岩さんの行動は早かった。11月に目標を定めてギャラリーの場所探し、店内の改装など着々と準備を進め、3月に会社を退社。そして、4月には念願のギャラリーを開店させた。

「イメージはちょうど8年前のパリ旅行で回廊を歩いた、パレ・ロワイヤルなんです。かつて貴族や文化人などを招いて文化交流をしていた場所なんですが、gallery QUONAもアーティストの思いや作品のストーリーをお客さまに伝えたことで生まれる化学変化みたいなものを楽しんでいただければと思っています。“ヒトとヒト、ヒトとモノ”の出会いの場になっていけばうれしいです。」

アーティストとお客さまのつなぎ役として!

ギャラリーの名前は黒岩直子(くろいわなおこ)の文字からとって、QUONA(クオナ)。自分の名前を入れたところからも、黒岩さんのギャラリーに対する強い思い入れと覚悟が感じられる。

それから約3年。毎回、趣向を凝らした魅力的な展示会を月に1~2回のペースで行っている。展示物もできる限り福岡で一度も紹介されたことがない作品を扱ったり、「種」などの変わった展示会を催したりして個性を出している。

「私の立ち位置は、あくまでもアーティストとお客さまのつなぎ役。作品の思いやストーリーをお伝えすることで、お客さまが喜んでくださっているのを目にすると、しみじみギャラリーをやってよかったなと思います。」

昨年末、知人からの依頼で介護の現場について講演を行ったという黒岩さん。そこでこう感じたそうだ。将来的に、かつて働いていた福祉の世界とギャラリーをうまく融合できないか。まだカタチこそは見えないけれど、福祉と芸術をつなげることができたなら、また新たな世界が広がるのではないかと。さまざまな経験を積み、自分にしかできないことに積極果敢にチャレンジする黒岩さんは、いま希望に満ちあふれている。

gallery QUONAで開催された「種」という展示会をカメラマンに撮ってもらい本に仕立てた思い入れのある一冊。

gallery QUONAで開催された「種」という展示会をカメラマンに撮ってもらい本に仕立てた思い入れのある一冊。

読者へのメッセージ

ヒストリー

1967.10(0歳)
福岡県福岡市で誕生
1989.3(21歳)
大学(言語障害教員養成課程修了)卒業
1989.4(21歳)
老年病専門病院に言語聴覚士として入社
2003.3(35歳)
結婚
2010.12(43歳)
38歳からの不妊治療を終了し、生き方を見直す
2012.3(44歳)
会社を退社
2012.4(44歳)
年間17本のペースで展示会を実施
現在に至る

※ 年齢は取材時のものです。

わたしとこれから