わたしとこれから 夢を叶えた女性たち vol.3

平穏な日々を一変させた東日本大震災

「まさか自分が福岡に移り住んで、天然木を軽トラに乗せて緑豊かな山道を走っているなんて…(笑)。ほんの5年前には到底考えられなかったことです。でも、こんな今の生活、実は気に入っているんです」と話すのは、現在、子育てをしながらプロダクトプランナーとして活動する筒井美由紀さん。

何を隠そう筒井さんは、典型的なバブル世代。都内の大手企業で存分に働き、高級ブランド品を身にまとって、年に1~2回の海外旅行を楽しんだという絵に描いたような華やかな時代を謳歌した。
同世代のご主人と結婚した後は、都内に螺旋階段やロフトがついた素敵な一軒家を構え、二人の息子にも恵まれて周囲がうらやむような幸せな日々を過ごしていた。

そんな時、不意に訪れた東日本大震災。「未曾有の出来事だったこともありますが、たまらなく不安で眠れない日を何日も過ごしました。母性本能からでしょうか。まずは子どもたちを守らなければ! と思ったんですね。」

震災をきっかけに日常に調味料として取り入れた天然塩と長年愛用のアロマオイル。

震災をきっかけに日常に調味料として取り入れた天然塩と長年愛用のアロマオイル。

me-mori”を卸しているインテリアショップへ。PORT/福岡市博多区吉塚1-45-27 ℡092(292)7467  http://portofports.jp

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バブル時代から続いた上昇志向の生き方から、ダウンシフトするきっかけを作ってくれた一冊。高坂勝著『減速して生きるーダウンシフターズ』(幻冬舎)。

バブル時代から続いた上昇志向の生き方から、ダウンシフトするきっかけを作ってくれた一冊。高坂勝著『減速して生きるーダウンシフターズ』(幻冬舎)。

好きが高じて46歳で薬膳の資格を取得

2ヵ月後、筒井さん一家は福岡へ移住した。福岡は縁もゆかりもなかったが、かつて出張や旅行で来た時の印象がとてもよかったからという理由で選んだという。

「実は震災が起こる少し前、仕事で悩んでいた主人が高坂勝著の『減速して生きるーダウンシフターズ』(幻冬舎)という本に出合い、“ダウンシフト”という生き方を模索するようになっていたんです。当時の私は正直ピンときていなかったのですが、震災後、この言葉の意味を身をもって経験することになりました。それまでの私たちはどちらかといえば何不自由のない裕福な暮らしが幸せだと思っていましたが、震災を経験した後、価値観が一変してしまいましたから。」
すべてが突発的なことばかりで、毎日が綱渡りだったと言う。それでも「生きていれば何とかなる。生きていることそのものに日々感謝していると、そのうち毎日のちょっとした愉しみを大切にするような心の余裕も出てくるようになったんです。」

そんな時に浮かんだ言葉が“Have some fun!”。そして、これを具現化したのが、同年8月に立ち上げたプロダクトメーカーだった。テーマは“親子の絆”。心に刻むハートフルな商品を提供したいという願いのもと、天然木のぬくもりが感じられる魅力的な商品を企画・製造・販売している。

子どもの成長を刻める引っ越し可能な身長計を発売

自宅兼アトリエに一歩入ると、思わず深呼吸したくなるような天然木のいい香りに包まれる。リビング横の座敷にはキュートな顔があしらわれた丸太がいくつも重ねられ、玄関口の壁にはたくさんの長細い板が立て掛けられていた。

「これはいま販売している“me-mori”という身長計です。昔は自宅の柱に子どもの成長を刻んでいましたよね。現代の住宅事情を踏まえて、引っ越し時でも持ち運びできる柱を作りました。デザインにも遊び心を加え、子どもの手型や写真を入れ込めるものや、裏側でビー玉を転がして遊べるものなど工夫を凝らしました。現在、約30種のバリエーションがあるんですよ。」

筒井さんは身長計のことを板ではなく、あえて柱と言う。昔の家にはどこにでもあった大黒柱を示していて、“me-mori”と表記したのは、me=私、mori=森を指している。

「人間は自然に敵わないということを私たちは身をもって学びました。自然を大切にして未来の子どもたちに残したいという気持ちと、天然木を身近に置いて木に触れる生活をすることで、あたたかい気持ちを育んで欲しいという願いを込めました。」
“me-mori”を発売するや否や、早くも都内の百貨店からの引き合いもあったというが、今は自分たちのペースでじっくりブランドを育んでいきたいと筒井さん。「人生いろんなことがありますが、自分をぶらさずに前さえ向いておけば、きっと大丈夫なんじゃないかしら」と朗らかに笑った。

“me-mori”のひとつ「Designer’s Collection」。楽しくなるようなカラーがキュート。子どもの成長を書き込んで!

“me-mori”のひとつ「Designer’s Collection」。楽しくなるようなカラーがキュート。子どもの成長を書き込んで!

読者へのメッセージ

ヒストリー

1966.4(0歳)
東京都品川区で誕生
1989.4(23歳)
大学卒業後、一般企業に入社
1996.2(29歳)
結婚
1997.1(30歳)
会社退社後、フリーランスのプランナーへ
1998.11(32歳)
長男誕生
2001.11(35歳)
次男誕生
2011.3(44歳)
東日本大震災を体験し、同年5月に福岡へ移住
2011.8(45歳)
Have some fun!を創設
2013.10(47歳)
me-mori 福岡デザインアワード入賞
2014.10(48歳)
me-mori 販売開始。
me-mori roll 福岡デザインアワード入賞

※ 年齢は取材時のものです。

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